器や盛りつけにも心を配り、季節感を盛り込んだ日本料理。その味と美を楽しむためにも、食事作法を知り、料亭の雰囲気に圧倒されず、堂々といただきたいものです。
今回は、これさえ押さえておけば恥ずかしくない「和食のマナー」を関西作法会会長の田野直美さんに聞きました。
基本の所作を取り入れるだけで、食べる姿が美しくなり、料理もじっくりと味わえます。
感謝の気持ちを心得て
本膳、懐石、会席料理などそれぞれに特有の作法がありますが、すべての所作の基本は料理人や接待側への感謝の気持ち。
作り手を思い、一品ずつ丁寧にいただきます。 ナプキンがある場合、ひざにかけるタイミングは料理が出る直前で、主賓が取ってから。半分に折り、開く方を手前にする方が口の汚れもふきやすく、ナプキンの汚れも隠せて便利です。気軽な席なら、肩からかけても構いません。
「いただきます」で感謝の気持を伝えます。箸(はし)袋は千代結びで箸置きに。箸置きがある場合はその下に置きます。
割り箸は床と並行に扇を広げるように割ります。
箸は汁椀の次
塗り盆やお膳の上、ご飯、汁、煮物など料理が一度に出てくる場合は、箸先を潤す意味で、まず汁椀(わん)から。フタを取り、しずくを椀の中に落としてから置きます。
フタは器が置かれている方の横へ置きます。汁椀は左、飯椀なら右横へ。脚付き膳なら膳の下へ。狭い時は邪魔にならない場所に重ねて置きます。
両手で椀を取り、利き手を離して箸を取り、椀底を支える指で持ってから、食べやすいように持ち替え、いただきます。
終わったら、また箸を汁椀の下で持ち、持ち替えて、箸置きへ。両手で椀を元の位置に戻します。飯椀も同じです。
生もの・煮物・焼き物の順で
飯椀を持ったまま、生もの・煮物・焼き物の順に箸をつけます。
煮物から食べるのはタブー。西洋料理もこの順。食べ合わせなどを考慮しているからです。
また、ご飯とおかずはできるだけ交互に食べましょう。
かじって歯型のついたものは器に戻さず、飯椀の中へ。やむを得ず戻すときは、歯型を自分の方に向けて。ワサビはしょう油に溶かず、刺し身に直接つけて、ワサビの風味も味わいます。
煮物の殻付きエビは、手で殻を取ります。そのまま口に入れず、器に戻してから食べます。
箸のタブーいろいろ
箸の使い方は食べる姿に大きく影響します。
タブーは 1.渡し箸 = 茶碗の上に渡して置く 2.そら箸 = 一度箸をつけながら、食べずに引く 3.箸なまり = 何を食べようかと箸を持ったまま見回す 4.もぎ食い = 箸についたものを口でもぎとる 5.刺し箸 = 煮物を突き刺す・人を指す 6.ねぶり箸 = 箸を深くねぶる 7.涙箸 = 汁を垂らしながら取る 8.探り箸 = 器の中をかき回して食べる 9.せせり箸 = 箸を楊枝代わりにする 10.箸渡し = 箸から箸に受け渡す 11.持ち箸 = 箸を持ったまま他の食器を持つ 12.受け箸 = 箸を持ったままお代わりする。
ご飯をお代わりする時は箸を置き、他の料理は食べずに持つ。刺し身のたまりや酢の物の小鉢は持ち上げて食べても構いません。
最後のお茶も、空いた手を、底が見えるように軽く添えると、だんぜん上品に、美しく見えますよ。
アサヒファミリー 2003年2月7日 掲載