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取材で人の家を訪ねることがよくあります。
そのたびに気になるのが自分の立ち居振る舞い。脱いだ靴をどこに置こうか、あいさつのタイミングは、出された茶菓に手をつけるべきか…。細かなことに自信がありません。
今は手紙や贈答品を送ってあいさつに代えるのが主流で訪問の機会が減り、たまにあると戸惑うことが多いようです。
今回は、これさえ抑えておけば安心の「訪問マナーのポイント」を、関西作法会会長の田野直美さんに聞きました。
無地のしはタブー
息子の婚約者の実家を訪ねるなど、少しかしこまった訪問を想定してお話しします。
まずは服装。相手を気遣わせず、それでいて失礼にならないように。男性はシングルスーツ、女性はスーツかワンピースが一般的です。
手土産は、先方の家の最寄り駅などで買わないこと。適当に用意した印象を与えます。
その際、無地のしはタブー。のし紙をかけることには、相手への敬意や格上げの意味があり、正式な作法。
それを無地にするのは無意味で、資源のムダです。表書きには「ごあいさつ」「御挨拶」や「薄謝」など、贈答品に込める気持を具体的に書きましょう。
名前は姓名を入れるのが正式です。
正式なあいさつと手土産は室内で
玄関に到着。ここでは訪問を告げる簡単なあいさつと自己紹介。「はじめまして、ヨシオの父の佐藤です。おじゃまいたします」とこんな具合です。
靴は家の中に向かって脱ぎ、上がってから相手にお尻を向けないように振り向いてそろえる。
中央を避け、靴箱の前に家人の靴が置いてあることが多いので、その反対側に置きます。
居間や応接室へ通されました。入ってすぐにソファや座布団に座らず、ここで初めて45度のおじぎで正式なあいさつを。訪問の目的を言い、席にはつかずに手土産を渡します。
ただし、生ものや土のついたものは、玄関先で。席についてからご主人が入ってきたら、席を立ち、座布団から下りてあいさつすること。
出されたお茶やお菓子は、手をつける方が相手も喜びます。話に夢中で手が出せなかった場合に「いただいていいですか?」と申し出るのもマナー違反ではありません。
でも食べ残しはタブー。ドクターストップで食べられないなら、理由を告げて辞退しても構いません。
何も言わずに手をつけないと「不都合があったかしら」と先方が気を遣います。
振り返って会釈を
滞在時間1時間~2時間を目安に、辞去の意思表示を。引き止められても、社交辞令と思って辞退するのが賢明です。
席を立ち、訪問の目的を果たせたことのお礼を告げ、玄関へ。本来なら招いた側が靴をそろえますが、マンションなど狭い玄関周りでは難しい場合もあります。
その際は、隅に置いた靴を真ん中に移動して履き、お礼を言って別れます。
重要なお客さんほど玄関を出てしばらく見送るもの。途中で振り返って、軽く会釈を。振り返っても誰もいないかもしれませんが、待っているかもしれない笑顔を見逃すよりは、ずっといいですよね。
アサヒファミリー 2002年10月18日 掲載